「その人、まだ西島さんに気があるんじゃないですか?」

「本当に彼女との間にはもう何もありません。それに、あちらには旦那も子どももいますから、もうそういった関係に戻ることは万に一つもありません」

「西島さんにやましい気持ちがなかったとしても、あまりいい気はしないです。相手の行動も不可思議だし。私、そんなに人間できてないんで、元カノと会ったって聞くだけで気持ちが真っ黒になります」

「そうですよね。ごめんなさい」

「また、元カノさんと会いますよね」

「え?」

「そのイヤリング返すために」

「捨てろと言われるかと思いました」

「そんなこと言わないですよ。元カノさん、困ってるかもしれないし」

 彼は「くくっ」と声を押し殺すように笑った。

「なんで笑うんですか」

 私は語気を強めて抗議した。

「君は人が良すぎるなあと思って」

「私は怒ってるんですよ!?」

「本当にごめんなさい」

「浮気してるんじゃないかって、ずっとモヤモヤしてました。でも、全然安心してません」

「不安にさせてしまって申し訳ない。彼女とはいろいろあって、彼女と別れたあとは一切恋愛してませんよ。もう一生恋愛はしないと思っていたんですけどね」

 彼は小さなため息をついてから私を見た。

「でも、あなたを愛してしまいました」

「西島さん…」

 彼はじっと私の目を見つめたのち、唇に視線を移した。滑り込むように優しく彼の唇が私の唇に触れて、あっという間に私の身体を蕩けさせてしまう。情熱的なキスに身悶え、下腹部が疼き始める。