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 私はレポートを提出してからそのままスーパーへ行って食材を買い、西島さんの家に訪れた。家主のいないマンションの部屋はしんと静まり返って空気がひんやりと冷たい。

真っ暗な廊下の電気をつけ、早速夕食づくりに取り掛かるべくキッチンへと向かう。さすがひとり暮らしが長く普段から料理をすることだけあって、調理器具や調味料はそろっている。

私が作るのはオムライスだ。実家暮らしの私は滅多に自分では料理をしないので、ぎこちないながらもネットのレシピを参考にしながら調理を始めた。


「できた…」

 多少不格好だが、味は大丈夫だと思う。付け合わせにサラダとコンソメスープも作った。私にとっては超大作だ。時計を見ると19時半を過ぎていた。もうすぐ西島さんが帰ってくる。オムライス、喜んでくれるかな。

イヤリングのこと、うまく聞けるだろうか。

彼が帰ってくる時間が迫るにつれて緊張感が高まってくる。

 ガチャ、と玄関の扉が開く音が聞こえた。帰ってきた。リビングでテレビを見ていた私は、パタパタとスリッパを鳴らして玄関に向かった。

「おかえりなさい!」

「おお、ただいま」

 部屋から勢いよく飛び出してきた私に彼は少し驚いた表情をした。

「誰かが家で待ってくれる人がいるのはいいですね」

「そうですか?」

 新婚さんみたい、なんて私も思ったが、口に出すのはやめた。

 彼はリビングでジャケットを脱ぎ、それをポールハンガーに掛けた。イヤリングがポケットに入っていた、あのジャケットだ。ドキリとする。