どうにもこうにも~恋人編~

 夢か現か、ふわふわとしたはっきりとしない意識の中で、誰かの手が私の頭を撫でている。はっとして目を覚ますと、そこには西島さんがいた。

「あ、ごめんなさい。私まで寝ちゃった」

 窓の外はオレンジ色に染まっていた。もう夕方らしい。

「体調はいかがですか?」

「おかげで幾分よくなったような気がするよ。ありがとう」

「冷蔵庫にお粥の残りとか、リンゴとか、ゼリー飲料とか、いろいろ入っていますので、お腹空いたら食べてください」

「今日は迷惑をかけてしまったね。必ず埋め合わせはします」

「じゃあ、今度会ったときは、私のことを目いっぱいかわいがってくださいね」

「もちろんですよ」

 帰り際、リビングのソファに無造作にかけたままになっていたジャケットが目に入った。皺になったらいけないと思い、そのジャケットを手に取ると、ポケットに何か入っている感触がした。

手を入れて取り出してみたそれは、女性もののイヤリングだった。小さな花が2つ縦に連なったゴールドのイヤリング。

なんでこれを西島さんが?

 リビングの隅に置いてあるポールハンガーにジャケットを掛け、イヤリングは自分のズボンのポケットにしまった。これを持ち帰ってどうするつもりなのか、自分でも分からない。

ただざわざわと胸騒ぎがした。