どうにもこうにも~恋人編~

 洗濯物を干し終わり、彼がいる寝室のドアを開けた。彼はすやすやと寝息を立てて寝ている。彼の頭をふわりと何度か撫でた。「またね」と囁いて立ち去ろうとした私の手首を彼の手が掴んだ。

「帰っちゃうの?」

 彼の甘えるような小さな声に振り向いた。彼は目を瞑ったままだ。

起きてるの?

寝ぼけてる?

「ここにいてくれないか」

 ため息にも似た掠れる声で私を引き留める。こんなふうに言われては、帰れるわけがない。私は、私の手首を掴むその手を握ってベッドサイドに腰を下ろした。

弱っている西島さん、ちょっとかわいいかも、と思ってしまうのは場違いか。

いつも紳士で大人の余裕をかましている彼の甘える姿は身悶えするほどかわいい。

「君の手は冷たくて気持ちいいな」

「冷え性、なので…」

 彼の手の熱が私の冷たい手に移っていく。彼を苦しめるその熱を私が奪い取ってあげられたらいいのに、と思う。

しばらくすると、熱どころか彼の眠気まで移ってきたのか、私までうとうとしてきた。

ちょっとだけ、寝よう。

私はベッドの横に座って彼の横顔を眺めていたら、いつの間にか意識が遠のいていった。