西島さんは、いつも長居はしない。今日も熱燗のおかわりを飲み切ると、すっと立ち上がってコートを羽織った。それを見て、何人たりとも彼の会計はさせじとばかりに、私はすぐさまレジへと向かう。私の必死さを見て彼はくすくすと笑いながら財布を取り出した。会計を済ませておつりを渡すと、彼がこそっと私に尋ねた。
「日曜日、空いてますか?」
「はい、特に予定はないです」
「日曜日、ドライブデートしませんか?天気がよさそうなので、紅葉でも見に行きましょう」
「行きたいです!」
「じゃあ、またあとで連絡しますね。ごちそうさま」
彼は私に微笑みを残して店を出て行った。
「ケイちゃん、もしかしてあの人と付き合い始めた?」
三宅先輩が私の後ろに立ってボソッとつぶやいた。
「な、なんで分かるんですか?」
「ケイちゃんが乙女の顔になってた」
彼はニヤニヤしながら私を見下ろした。思わず両手で顔を覆う。
「もしも泣かされるようなことがあったら胸貸すぜ。あのときみたいに」
「そんなこと二度とないですから!」
「ふーん。何があってそうなったかは知らないけど、すごい風の吹き回しだな」
彼は意味ありげにうなずいて厨房へと戻っていった。
西島さんと会えなくなってしばらく後、理工学部棟の研究室で三宅先輩から告白されたことを思い出した。彼の気持ちは受け取れなかったが、その後もバイトの先輩後輩として以前までと変わらず仲良くやってきたつもりだ。もう、私のことなんて好きじゃないよね…?
「日曜日、空いてますか?」
「はい、特に予定はないです」
「日曜日、ドライブデートしませんか?天気がよさそうなので、紅葉でも見に行きましょう」
「行きたいです!」
「じゃあ、またあとで連絡しますね。ごちそうさま」
彼は私に微笑みを残して店を出て行った。
「ケイちゃん、もしかしてあの人と付き合い始めた?」
三宅先輩が私の後ろに立ってボソッとつぶやいた。
「な、なんで分かるんですか?」
「ケイちゃんが乙女の顔になってた」
彼はニヤニヤしながら私を見下ろした。思わず両手で顔を覆う。
「もしも泣かされるようなことがあったら胸貸すぜ。あのときみたいに」
「そんなこと二度とないですから!」
「ふーん。何があってそうなったかは知らないけど、すごい風の吹き回しだな」
彼は意味ありげにうなずいて厨房へと戻っていった。
西島さんと会えなくなってしばらく後、理工学部棟の研究室で三宅先輩から告白されたことを思い出した。彼の気持ちは受け取れなかったが、その後もバイトの先輩後輩として以前までと変わらず仲良くやってきたつもりだ。もう、私のことなんて好きじゃないよね…?


