まさかあの電話のあと倒れてそのまま?

「大丈夫ですか!?」

 私の呼びかけに彼はうっすらと目を開け、何やら返事ともうめき声ともつかない声を上げた。

「とにかくベッドに戻りましょう」

 私は彼の身体を引きずってなんとかベッドに寝かせた。寝た子は重いというがまったくその通りで、ベッドまで彼を運ぶには一苦労だった。

 ベッドサイドテーブルには体温計と風邪薬が置いてあった。どうやら病院には行ったらしい。体温計で彼の体温を測ると38.2度もあった。

 きっと昨夜からご飯を食べていないだろうから、お粥を作ることにした。慣れない料理ではあったが、卵と鶏ささみとほうれん草が入ったお粥を作った。

「西島さん、お粥ですよ。食べられますか?」

「食欲ない…」

「何か食べないと元気出ませんよ。ほら」

 彼の重たい身体を抱き起して、お粥を無理矢理口に入れた。

「味がしない…」

「風邪引いてるから仕方ないですよ」

「まるで介護されてるみたいですね」

「介護じゃなくて看護ですよ」

「そうですね。あとは自分で食べられます」

「洗濯物、溜まってるようなので洗いますね」

「そこまでしてもらわなくても」

「ちゃんと干すところまでしておきますんで、ご安心を」

「じゃあお言葉に甘えて」

「スポーツドリンク置いておきます。あとで風邪薬飲んでくださいね」

「ありがとう」

 洗濯機を回したあと、彼の身体を拭いてあげようと思い、お風呂場から洗面器とタオルを拝借した。彼の様子を見に行くとお粥はすべて平らげて寝ていた。薬も飲んだらしい。