「全然くたびれたオヤジじゃないし。むしろ私の方が西島さんと釣り合ってないんじゃないかって不安なのに」

「そう思うのは、お互い様なのかもしれませんねぇ。こんなおじさんを好きになるなんて、あなたは変わっていますね」

「だからおじさじゃないですってば」

 むくれて言う私に、彼はふっと笑みをこぼしてジャケットを脱いだ。

「自分の中にこんな独占欲があるなんて知りませんでしたね」

 私の額、頬、首とむき出しの私の肌にキスの雨が降り注ぎ、再び私の唇と重なる。唇を食むようなキスからいつの間にか深く熱いキスに変わっていく。

唇の隙間からぬるりと柔らかいものが咥内に忍び込み、私の舌と絡み合う。粘膜と粘膜が触れ合い、混じり合い、私たちの境界線がなくなっていく。

思考が融けて意識が薄らぐ中、押し寄せる快感の波に理性が流されそうになる。今までに感じたことのない官能的な衝動に怖くなって彼の胸を押した。私の異変に気付いて彼は唇を離した。

「どうしました?」

 彼の囁く声に、敏感になった耳からぞくぞくと走る電気にびくりと身体が震えた。
「なんか、怖くなっちゃって…」

「怖い?」

「こういう感覚、あまり経験なくて、私、どうにかなっちゃいそうで…」

「気持ちよくなっちゃったんだ?」

「あからさまにそんなふうに言わないでください!」