いつの間にか夕方になっていた。そろそろお別れの時が近づいている。車の中で他愛もない会話をしていると、帰りの1時間半もあっという間に感じてしまう。

またしばらく会えないのかと思うと寂しさが胸にこみ上げる。彼は仕事をしているから仕方がない。次会えるのはいつだろう、とまだ一緒に過ごしているのにそんなことを考えてしまう。ああ、もうすぐだ。そこの信号を右折すればもうすぐ私の家に着いてしまう。

信号、赤になればいいのにな。

「あ」

「どうしました?」

「赤になればいいのにって思ったら、本当に赤になりました」

「なんで赤になればいいのにって思ったの?」

「もう少し、西島さんといたいから」

 彼ははっとして私の顔を見た。

「え、なんですか?」

「石原さんってかわいいこと言いますね」

「え?」

「ちょっとうち寄りますか?」

「え、あ、はい」

 車は進路を変えて、彼のマンションへと向かった。