どうにもこうにも~恋人編~

 しばらく歩くと滝の水音が聞こえてきて、観瀑台と言われる場所に着いた。すぐ近くで滝が鑑賞できるのだ。

「わあ、大きい滝!」

 高さが100メートルほどあるのではないかと思うほどの上方から勢いよく岩肌を滑る水の音とその滝の大きさに圧倒されながらも感動を覚える。真っ赤に色づく木々の間を流れる滝の白色のコントラストが美しい。水底が見えるくらい水は透き通っていてきれいだ。

「見てください!虹がかかってますよ!」

 滝壺にかかっている虹を指さして興奮気味に彼に言った。子どもみたいにはしゃいで写真を撮る私を見て彼は笑っている。

「自然ってすごいですねぇ」
 ひとしきり写真を撮り終わったあと、手すりにもたれながら改めてしげしげと水音が轟く滝を見上げた。

「上流の魚が滝に流れ込んできたりしないんでしょうか?」

「魚だって滝壺に落ちたら全身打撲で即死でしょうね」

「げ」

「実際にはそんなことはないですよ。魚は流れに逆らって泳ぐ習性があるので、大抵は上流で留まっているものです」

「西島さんって物知りなんですね」

「年の功ですよ」

 私たちは壮大な自然の造形を十分に堪能したのだった。