どうにもこうにも~恋人編~

「私、鯉料理って初めてです」

「そうなんですか?せっかくだから鯉料理セットを頼みましょう」

 メニュー表を見ると、鯉の洗い、鯉こく、ごはん、お新香のセットと書いてある。

「こいのあらい…こいこく…?」

「鯉の洗いっていうのは、温水に通してから切身を氷水にくぐらせて身を引き締めたものです。鯉こくは、鯉を輪切りにして煮込んだ味噌煮込み料理のことですよ」

「ほうほう…」

 メニュー表に再び目を移す。なかなかのお値段…。

「ここの鯉は上流から流れる清水にさらされているので、川魚特有の臭みもないと聞きますよ。絶対おいしいはずです」

「でも、お値段が…」

「そんなこと気にしてるんですか?私が出しますから大丈夫ですよ」

「いやむしろそっちの方が…」

「あなたはいつもお金のことを気にしていますね。それなりの稼ぎはありますので心配は無用ですよ」

「でも…」

「私が食べたいので付き合ってくださいね」

 彼は「すみません」と店員さんを呼んで、鯉料理セットを注文した。