私はもう見学する気がなくて、廉と一緒に国立博物館を出ました。

あの直紀が大人の前であれほど威張っていると思うと、普段はどうやって空をいじめているのか想像できない。

「どうしたの?あいつを懲らしめたんじゃないの?どうしてくよくよしてるの?」

廉は私がこんなに空君のことを心配しているのを見て、不機嫌になるだろう。

彼の目には空はいつも別の男の子供だ。

私は努力して笑顔を上げて、元気を出しました。

「いえ、ただぼんやりしていただけです」

廉は道端のベンチに座って、私を呼んで彼のそばに座った。

「空君が羨ましい」

「えっ?」

「カブトムシって、一人で遊んでるわけないでしょ?」

「どういう意味?」

「この年の子供はいじめを恐れず、孤独を恐れている。この世界で最も乱暴で野蛮な場所は暴力団で、もう一つは子供の世界だ。空君が道理を説く年になると、空君には友达がたくさんいる」

「直紀にいいこと言ってるの?」

「そうじゃない。ただ、そんなことが空君の人生に影響を及ぼす心配はない。琉菜は自分が五歳までに起きたことを覚えているのか。誰かにいじめられたことがあるのか」

私は首を横に振って、「そう言ったら、本当に思い出せない」と言った。

「だから、このことが琉菜に与える影響は、実は対空よりも大きい。言い換えれば、さっきそうしたのは、この記憶を失う運命にあった直紀を教えるためではなく、息子をきちんとしつけない直紀の両親を教えるためだ」

「じゃあ、廉はね、どれくらい前のことを一番早く覚えたんだ。七、八歳のことしか覚えていないんだ」

「三歳」

「わあ、やっばり廉は天才だな」

「いいえ」

廉は立ち上がって、手を私に伸ばした。

「そういうわけじゃないけど、もういいんだよ。琉菜が俺の手を握りしめてくれればいいのに」

なぜか、この時の廉眼底は少し悲しい