私は鈴木茉由。

ただいま大変なことになっています。

「ちょっとあんた、ついてきてよ」

なんで怖そうな女子に目をつけられてるの……。

原因はあいつだろうけど。



遡ること2時間前。

「茉由ちゃん、鈴木君と組むの⁉︎」

中田さんに聞かれた。

「うん、そうだけど」

「本当だったんだ!すごっ!」

そう、遙はこう言われるぐらいみんなからはイケメンって言われてる。

まあ、顔はいいけど。

性格は微妙。

チャラいから、私はすっごく苦手。

「っていうか噂になってるってこと?」

「うん、もうみんな知ってると思うよ?」

「そうなんだ……」

やっぱり噂になるよね。

覚悟はしてたけど、やっぱり最悪。

「気をつけてね?」

「ん?何で?」

「最近、鈴木君のファンクラブ動いてるらしいから」

なんでこんな時に動くかなぁ。

「わかった。ありがとね」



そして忠告されたのにも関わらず私は捕まってしまった。

「あなた、調子に乗ってるの?」

「何が」

「遙君と同じに二人三脚やるだなんて!」

やっぱりね。

でも逃げるには状況が悪い。

私は1人なのに、あっちは4、5人いる。

私が考えてることに気づきイライラしたのか大声で怒鳴った。

「ふざけないで!」

そして手を振りかざす。

「ちょ、さすがにやばいって」

「殴るのは、ね?」

「うるさい!遙君は、遙君は!」

殴られた、と思ったと思い目をつぶったけどその瞬間は全然こない。

不思議に思い、前を向くと誰かがいた。

あいつが。

「俺が、どうしたの?」

「は、遙君」

遙は私を庇う形で前に立っていた。

「俺のことを思ってくれるのは嬉しいけど、誰かを殴るのは好ましくないかな」

「ご、ごめんなさい、だってあの人が」

彼女がそういうと、遙は固まった。

すぐに彼女たちは顔を青くする。

「俺が選んだ人のこと、まだ文句言うの?」

「い、いえ、本当すみませんでした!」

そう言って逃げていく。

すると遙はすぐにこっちを向き、心配そうな顔で言った。

「……大丈夫か?」

「大丈夫。ありがと」

私はそう言ったけど、遙は首を振った。

「足震えてる」

そう言われて見ると、足は震えていた。

「怖かったよな。ごめん」

「だ、大丈夫だから」

そう言って逃げようとすると、手を掴まれた。

何。そう聞こうとする前に言われた。

「頑張ろうな!」

「う、うん」

私は今度こそ逃げた。

心臓が鳴ったことには目を向けずに。



体育祭当日。

残るは二人三脚。

私はいつも以上に緊張していた。

あれから遙はずっと練習に付き合ってくれた。

いける。そう思いながらも緊張はする。

遙に一言言っておこう。

そう思い近づいた。

「遙、二人三脚頑張ろうね」

「ああ、頑張ろう!」



二人三脚は進むのが意外と早くて私たちの番がきた。

「いくぞ」

「わかった」

声をかけながら進んでいく。

遙はペースを合わしてくれる。

もう少しでゴール。

ゴール!

そう聞こえて周りを見ると、私たちは1位でゴールしていた。

「やったね、遙!」

「そうだな!」

満面の笑みにドキッとしてしまった。

少しだけど距離は近くなったかな。

遙の性格も悪くない。

ほんの少しだけどそう思えた。