なんとリンゴの面が墨でも塗られたかの様に真っ黒。
それにさっきのベタベタした質感とは程遠い。
磨き上げられたピカピカしたテレビみたいに表面が光っていた。
表面を触ると、カチカチしてる。でも噛みきれない固さではなさそう。
でもテレビリンゴの特徴の「映像が映る」というのはない。
やっぱりちゃんと機能しないっていうのは、腐ってるんじゃないのか?
「やっぱやめたほうがよくない?食べるの……」
しばらく黒い画面のテレビリンゴを眺めていたゆうとが、ニヤリと笑う。
この顔はとても悪い顔だ。
長年付き合っていたらわかる。
なんだか嫌な予感がーー。
ふとそのテレビリンゴを取り上げようとした瞬間だった。
ーーなんと、ゆうとがそのテレビリンゴを食べ始めたのだ。
これには僕もびっくりで。
「ちょっ……バカッ、やめなよっ!!」
「……ぷはっ。はへー。まずっ!!あー、食った食った」
リンゴをあっという間に食べ終えた後。
ゆうとは舌を出し「まじー」なんていいながら笑ってみせる。
本当、何をしでかすかわからない人だな。
ゆうとって。
「ねぇ、なんで食べようと思ったの?!」
「なんとなーくさ。もし腐ってたらどんな夢を俺に見させてくれんのかなーっておもって。でも夢なんか見なかったな。お前の場合すぐに倒れて眠ってたのに。やっぱ、腐ってると効果はないのか……?」
そんな呑気なことをいってた次の瞬間だった。
ゆうとが、「っう……!?」と腹を抱えて床に突っ伏した。
「どうしたの!?」
僕が肩を支えて抱き抱えると、ゆうとは、「腹が痛い」と訴えた。
そうゆうとは、食中毒になってしまったのだ。
テレビリンゴでもたべものであることは変わりない。
腐ったものを食べれば、当然そうなる。
ーーやっぱり力ずくでも奪っておけば良かった……。
だがそんな後悔だけでは済まなかった。
そんな後悔ではーー。
❤︎
仕方なくゆうとを家まで送って行ってその後自分の家に帰り、朝になった時だった。
昨日の一部始終をゆうとのお母さんに聞いたのだろう。
僕のお母さんはカンカンに怒っていた。
そりゃそうだ。
友達に腐ったものを食べさせてしまったからだ。
「あんた本当バカなんじゃないの!?」と言われ3時間近く怒られるるのは滅多にないことだ。
そんなこんなでゆうとの家に行きご両親に頭を下げ、謝まる。
ゆうとのお母さん、お父さんは「いいですよ。あの馬鹿息子が悪いんで」と笑って済ませてはにかんだ。
本当に性格がいいご両親だよ。
感謝しなきゃ。
それでまぁなんとかテレビリンゴのことは一応済んだと思っていたんだけど……。
「アイツ来ないな学校」
僕のもう一人の友人佐々木がそう口を開く。
佐々木は僕と隣の席。
昼休み佐々木の仲間にサッカーに誘われたので靴を履いていた時だった。
「アイツとなんかあったの?」
テレビリンゴのことかと一瞬頭をよぎったけど、すぐに打ち消した。
だって実際本人に謝って、「いいよ。俺も悪かった」って笑顔で言ってくれたからだ。
別に嘘なんてついていない。
そんな笑顔だってことは僕にはわかる。
本当だ。


