「ゆうと、そんなに食べるの?」




「ちょっとな。サッカー昼休み死ぬほど動いたし、午後も体育の授業走りまくったからさ」



これでもかと言わんばかりにお菓子をリビングの机に並べるゆうと。



まぁ、別に10円の駄菓子だしお母さんは何も言わないだろう。



問題はフルーツだ。



「フルーツは1種類に決めようよ。そうじゃ無いと僕がお母さんになんて言われるか……」



「わかってるって。べつに全部食おうなんて思ってるわけないって」




10円のお菓子を沢山取っておいて、それはそうとは考えられないよ。ゆうと。






「えーっと、フルーツ箱には……バナナとみかん……キュウイに梨……」




どれもピンとこない物ばかり。



取り出しながら生けすかない顔をしている僕。




中には旬じゃ無い食べ物も入っていて、絶妙な気分だ。







手が冷える。



早く決めよう。




お腹すいた。






「うーん……食べたいものある?」





「うーん……これじゃあな……って、あっ!?」




取り出した果物を一瞥したと思えば、その中の果物一つを手にとった。




「これ、テレビリンゴじゃん!!」




テレビリンゴとは、りんごを切るとその切った本人が一番見たい情報が切り口からテレビのように見える、優れものりんご。




テレビリンゴと書かれた、シールが何よりの証拠だ。




「えー、テレビリンゴ今が旬だけど、今はあんまり美味しく無いじゃん」




「旬な食べ物これしか無いだろ?まずはつべこべ言わずに食べてみろよ。ほら」




リンゴを投げられ、キャッチする。




見た目は普通のリンゴなのに、これでテレビのように切り口がそうなるって一体どうなってるのか。




テレビリンゴを渋々まな板と包丁を出してカットする。





切った瞬間、隙間から光が出てきた。




それはすぐに消えて、リンゴの面をゆうとと僕がみえるようにむける。





すると僕が好きなアイドル「南ちゃん」が写っていた。




可愛いピンクのフリルを散らした洋服に身を包む南ちゃんと、センターで踊るペンライトを持ったオタク達が踊り狂っている。




「よかったな。あたりのリンゴで」






確かに僕の好きなアイドルが出てきて嬉しいのは嬉しいけど、オタクは写す必要ないだろ……。




げんなりした様子で見ていたら、曲が終わり南ちゃんが話し始めた。




「南、アイドル今年で引退します!!」






それは一瞬だった。




一体何が起こったのか分からなかったが……。





「え……えぇ!?南ちゃんが引退ぃ!?」




驚きと悲しみのあまり、絶叫に近い声が出た。





それを見かねたゆうとが、優しく僕の肩を持った。






「……なんか、ごめん。俺がこんな事を言ったから……」





余計なものを見せてしまったとゆうとは言いたいのだろう。




だけど承諾した僕も悪いし、まぁ、どちらにしろ普通のニュースでも大々的に流れる運命だ。






辛いけど認めよう。




トホホ。