「黒い画面のりんご」



「放課後公園行こうって思ってたのに、こんな天気になるとはなー」



親友のゆうと12歳。

僕と同じクラスの(多分)イケてる男の子。



友達はメチャクチャ多い。



そんな彼は僕のベッドの上で漫画を漁って寝転んでいた。



まぁ、友達だからいいか。




僕の名前は早風かい。12歳。




男子たちからは「かい」なんて呼ばれてる。




クラスの地位も普通。




どこにでもいすぎと自分でも思う。




そんな個性のない僕だけど難なく幸せな毎日を送って生きている。



今日の天気は一日中晴れだと聞いていた。



だけど違う。



天気予報が外れたのだ。



学校が終わった瞬間、雨が降るという大惨事。




そんな日の放課後なわけで。




「久しぶりに仲間とか家を回りながら友達誘って鬼ごっこでもしようと思っていたのに……。これじゃーねー」





「雨が止むまでこれじゃ時間かかりそうだね……どうする?ゆうと」



ゆうとは「うーん」と頭を悩ませ苦悶の表情を浮かべる。



「まぁ……今日は諦めるか。みんなで野球する事は。お前の家でテレビゲームでもしよう」



今日は僕の親は家にいない。



何故なら火曜日に母親は深夜までデパートのパートが。





お父さんはお父さんで事務員の仕事が深夜まであるのだ。




だから夜遅くまで僕の家は、ゆうとと僕だけいる事だってできる。




「ちなみに、ゆうとは大丈夫なの?」




「あぁ、俺の親も夜遅くまで帰ってこないからぶっちゃけ深夜まででもいいんだ。だけど、保険として6時には帰ろうと思う」




ゆうとの両親も共働きか……。




案外ゆうとに友達が多いのは一人の時間を潰す為なのか。




ーー親友だと思ってくれているのかな……僕の事?



ふとそんな事が頭をよぎる。




まぁ、過ぎったとしても確かめようがない。




思っていなかったとしたらもうそれは受け入れるしか方法がないだろう。




「あー、そんな事より小腹がすいたなー。お前の家なんか無い?」





「え……あぁ、そうだね。えーっと、お菓子箱と冷蔵庫にフルーツがあったから探して食べてもいいよ」





「ありがとう。サンキュー、お前も一緒に来てくれよ。色々探して食べようぜ」





「うん」




さっきの考えていた事は無かった事にしたいこの笑顔。




ゆうとの最大の魅力はこの笑顔。




疑いをかけてしまう自分が少々嫌になってしまう。




ーーごめんね、こんな僕で。





リビングに向かう後ろ姿を見てこっそり謝った。




❤︎




「えっと、ソーダ飴、チョコ棒、きなこ棒、ラムネ、うまい棒ーー」