その光景は悲惨だった。
近づくにつれて無残な姿が目に見える。
なんと言えばいいのだろう。
子供達は見るからに明らかに死んでいた。
それは間違いなかった。
だが異常なのはそこではない。
子供達の腕、足、胴体、顔全て膨れ上がって、真っ赤になっている。
水ぶくれを想像以上に酷くした状態と言おうか。
ある男の子にゆっくりと近づく。
もう死んでるとわかっているのに、助けたくなるのは死を受け入れたくないからか。
「ねぇ、おきーー」
次の瞬間、「ベチャ」という液体が弾け飛ぶ音がした。
刹那、僕の顔に真っ赤な血と、肉の破片が飛び散った。
それはその男の子の内臓の破片。
周りにいた次々の子供達の遺体も、ベチャ、ベチャと大きな水音を立てて爆発するように弾け飛ぶ。
「そ……そんなっ!!いやっ……いやあああああ!!」
「落ち着けっ!!ロバートッ!!」
「なんで……なんでっ!!無敵の油じゃなかったの!?どうしてどうしてこんな無残な姿にっ!!これじゃまるで……」
「油で揚げすぎて破裂したみたいだって言いたいのか?」
ユージオは泣き叫ぶ僕を物陰に連れて行き、僕を見つめた。
ーー油で揚げる……?
「ど……どうゆうこと?」
「……俺の推測だけど、おそらくあの油はやっぱり万能の油じゃないみたいだ。おそらく「火」を使うものがきっと守れないんだと思う」
ゆっくりとユージオは僕の隣に座り込む。
「あの怪我の仕方、どうも油で揚げすぎて膨らみすぎた揚げ物の衣にそっくりだなって思って勘付いたんだ。それに熱が周りにこもって熱気が強かったからさ、恐らくはそれで爆発したのかもしれない」
「じゃあ、爆弾やミサイルを投げられたら……」
「恐らくは死ぬ。間違いなくな」
深い絶望を味わった。
「嘘だ……嫌だッ!!やっぱり僕死にたくないよッ!!逃げようよッ!!」
「もう無理だ。敵はこの事をもう分かってる。それに子供の足じゃこの国境を越えたって、数メートルぐらい。ミサイルや爆弾なんか投げられるともう追いつかない」
「う……うわあああああ!!」
大きな声で泣き出す僕をユージオはゆっくり抱き抱えてくれた。
「死にたくないよっ!!死にたくないよっ!!」
その泣き声の主を探すかのように、どこかで爆音が弾け飛ぶ。
僕達がいるマンションだった建物が揺れ動く。
ボロボロと砂埃が舞う。
「ごめん……守ってあげられなくて」
「やめてよ。最後みたいじゃないか……」
本当は自分はもう生きられないとわかっていた。
だけど分かっていながらも、どこか夢であってほしいと願っていたのだ。
全ての願いは叶わないかもしれない。
だけど今度だけは叶えてほしい。
お願いだよ、神さま。
「俺さ、一つ夢があるんだ」
「……ユージオ?」
それは僕と同じ「今を生きたい」と願う気持ちだろうか?


