ーー一体何があったっていうの?




ーーーーもしかして……本当は怒ってる?





内心疑心暗鬼ながらも、佐々木とのサッカーを終える。



そして午後の授業を済ませて家に帰ることに。




「ただいまー」



「お帰り。どう?ゆうとくん今日学校来た?」




もうあの日から一ヶ月以上来ないゆうと。



「ううん。来なかった」




「……そう」




絶対に関係があるとしたら僕らだ。




テレビリンゴを食べたその日から来ないのだから。




何処か暗く重苦しい空気を一変させるように母が口を開いた。




「あっ、そうだわ。私今日高級なお菓子をくじ引きで引き当てたのよ。そのくじ引きの景品が大量に当たったのよねー。良かったらゆうとくんの家に持っていってあげてきたらどう?」





それは僕の事を気遣っていってくれているのか?




それとも、大人の忖度で自分が傷つきたくないから「僕」という存在を使って謝らせようとしているのかよく分からなかった。




だけどこんな空気をずっと引きずるのもきっと良くない。




ゆうとが何を考えているか、僕自身の目で確かめなきゃ。


僕はゆっくりと顔を上げた。



そこには無理に笑顔ではにかむお母さんの顔。

「わかった。行ってみるよ」


これでなんとか誤魔化せたのかわからないが、僕も無理をしてはにかんでみせた。

❤︎




「こんにちはー。あらー、どうしたの?」





やってきたのはゆうとの家。






白い壁が目立つごくごく普通の家だ。





ここに学校の人気者が閉じこもっているなんて考えもしないぐらい普通。




「えっと……ご迷惑をお掛けしたのでこれ……僕達の気持ちです」


お母さんからもらった手提げお菓子を差し出す。




「あらー、そこまでしなくても良かったのに。でも、せっかくだから頂いていくわね」




「せっかくだから」と言うことは、多少なりとも起こっているのだろうか。




言葉の裏を取ってしまう。




表情を見る……怒ってはなさそう。




目も笑ってないって事はないし、普通に善意で言ってるってのは分かった。




何よりその証拠が、「せっかく来てくれたんだから、少し上がってみない?」という言葉だった。



ーーやっぱりゆうとが来ない原因は他にあるって事?




「最近ゆうとねあのあと一人で閉じこもっちゃって……私にも原因がわからないのよね……腐ったテレビリンゴを食べてお腹壊したって事だけで。でも、あの子はたかが少しのこんな不幸でこんな事になる事なんてないの。だから決してあなたのせいじゃないのよ。そこだけは分かって」





僕に緑茶を差し出してお菓子も用意してくれるその姿はまるで天使のように朗らか。





「は、はぁ……」




ーーじゃあ、一体何が原因だというの?





ーー如何してゆうとは閉じこもってるの?




そんな疑問が浮かびながらも、ゆうとのお母さんに連れられ、ゆうたの部屋に案内させられた。




「ゆうと、お友達が来たわよ。顔見せてあげなさい」




そう言った瞬間、物音がピタリと止まる。




物音の正体はゲームだろう。




しばらく間があって「本当?」と。






少しゆうとのお母さんが扉を開ける。




しばらくゆうとがお母さんと話をした後ゆうとが顔を見せる。




「入ってもいい?」




「……おう」