俺の想いが届いていたことに安堵して


『好き』の二文字に浸っていると





「お世話になりました」




何を勘違いしたのか、莉子は
深々と頭を下げるとソファから立ち上がった



「じゃあ」



クルリと背を向けようとする莉子を止める



「待って」


「荷物は持てる分だけ持って
後は週末取りに来ます」


言い逃げする莉子を止めるために声色を変えた


「莉子っ」


それに反応した莉子は動きを止めた


「まだ話は終わってないし
この期に及んで言い逃げか?」


テーブルを跨いで莉子の前に立つ


「莉子」


止まらない莉子の涙を拭ってみる


「莉子」


俯いたままの莉子の顎を引き上げると
俺を好きだと言った唇が見えて
抑えがきかなかった



初めて合わせた唇は



涙の味がした





戸惑っている莉子をそのまま抱き上げてソファに腰を下ろす

恥ずかしそうに俯く莉子を押し倒しそうになる気分をどうにか堪えて


全てを話すことにした、が


莉子は気づいていないだろうが
ずっと小さくお腹が鳴っている


お互いに落ち着くためにも
腹ごしらえから始めようと


莉子をお風呂に送った


サッと食事の支度をして
莉子と入れ替わりにお風呂に入ると

核心に触れないお喋りをしながら食事を済ませて


ホットワインを作ってソファに腰掛けた


そこから順序立てて話しを進める


この街へ来るキッカケと
オネェになった事件


莉子を好きになったこと


千載一遇のチャンスのこと


キスをした理由に繋がるそれを
話すだけで答え合わせのように莉子の気持ちも聞けて


お互いの想いを確認し合って
付き合うことになった


「莉子」


「ん?」


「眠い?」


「うん」


緊張の糸が切れたように
何度も目蓋が落ちる莉子を休ませるために


今夜はゆっくり寝かせることにする



「凛さん、今日も休ませてごめんね?」


「全然平気」


「おやすみなさい」


「おやすみ」


あっという間に深い眠りに落ちる莉子のオデコに口付けて寝室を出た