「マスター」


「アンタ、次“マスター”言ったら問答無用で裸にするわよ?」


「・・・っ!!」


「凛、ほら言ってみて」


「凛・・・さん」


「ま、それで許してあげるわ
で、なにを言いかけたのよ」


「あ〜、今日お店は休み?」


「うん、今日はそんな気分じゃないの」


「ネクタイしてるのに?」


「ちょ、アンタ、そこは突っ込まないところでしょう?」


「フフ、ごめんね?」


「良いのよ。莉子が泣いてるなんて
よっぽどのことなんだから
今夜は甘やかしてあげるわ」


「わーい」


店のことを考えれば申し訳なさが先に立つけれど
今は誰かに側に居て欲しい


「アンタって本当分かりやすいわね」


「そんなこと凛さんにしか言われない」


「フフ、アンタとアタシじゃ場数が違うのよっ」


「フフ」


「じゃあ可哀想な莉子に
ご飯作ってあげるわね?」


「可哀想言わないで」


「あ〜ら、じゃあ不憫?」


「可哀想でお願いします」


「任せといて〜」


それじゃあと手を引かれて大きなベッドからおりる


視線を落とした所為で
彼の為にと履いたフレアスカートが皺になっているのが見えた


「・・・ハァ」


小さく吐いたため息は


「はいはい!後ろは振り向かな〜い」


陽気な凛さんの声が拾ってくれたようだ


「・・・そう、だね」


「そ〜よ?だってね悲しいけど
失恋を乗り越えると女は成長もするし
美人にもなるの」


・・・失恋か


そう言って笑った凛さんは
どこまでもイケメンで


「どんだけ失恋したの?」


イケメンさは天然ではなく養殖ということにした


「モォー、アンタってホントデリカシーないんだからっ」


頬を膨らませたってイケメンはイケメン


目の保養とばかりにガン見する私を


「ま、そういうところも可愛いんだけどね〜」


凛さんはそう言って繋いでいない方の手で頭を撫でてくれた