フラフラと臣が居るであろう中央広場へと足を向ける


いつもポケットに入れているはずの携帯電話を忘れてきた


勢いに任せて飛び出すなんて
どれだけ焦っていたのか


自虐的に笑う俺を見つけた臣が駆け寄ってきた


「居たのか?」


「もう帰ったあとだった」


「そうか」


弱っている俺を慰めるように
いつもは放置なのに
助手席のドアを開けてくれた臣は


「燻っていても仕方ないから
実家に連れ戻しに行こうぜ」


そう言うと車を発進させた

前向きな臣には助けられることが多い
弱ってる今は特に有り難いと思えた


「俺、携帯電話忘れてる」


「は?」


「取りに寄ってくれ」


「ハハ、了解」


一時間後


[実家に親戚が集まるので
こちらに泊まって、そのまま出社します]


絵文字も入っていない業務連絡のようなメッセージが莉子から届いた
 


  [大丈夫?迎えに行こうか?]

[平気]

  [了解。無理しないで]

[ありがとう]



やるせなくても、追求も出来ない
俺たちはそのままUターンすることになった


「平気か?凛」


「なんとか」


臣と別れて莉子の気配のない家に戻る

つい五日前まで一人だったのに

今はもうそれが辛い


「莉子」


気怠い身体は気力を失くして


珍しく早く寝ることにした



それなのに


莉子の匂いのするベッドは


あまりに胸を締め付けてきて


結局、ウトウトするだけで
深い眠りに落ちることはなかった