ーーーーー日曜日



朝早くに起きた莉子は
昨日の涙なんて忘れたみたいに


忙しなく家事を済ませると


「実家に行ってくるね」


笑顔で出かけた


実家に“帰る”じゃなくて
“行ってくる”だったから快く送り出したけど


なんだか変だった



だから、気がつけば臣に連絡していた



「悪い」


「たまには良いさ、ちょうど
嫁と子供は町内会の行事で出かけたから暇だったんだ」


二日連続会うなんて珍しいことだが
こんな時にどうして良いのか分からない俺には臣しか縋る術がない


莉子のことが頭を占める俺の携帯電話が鳴るのは暫くしてからだった


【NEXTOP 山下】


莉子のマンションの解約の件かと
電話に出た俺は


(中井莉子さんって、確かEY解約の子だよな?)

「そうだけど」

(物件探しに店に来たぞ)

「ハァ??」


・・・どういうことだ


莉子の“実家行き”の目的が違っていたことに胸騒ぎがする


「とりあえずNEXTOPへ行ってみよう」


臣に急かされるまま車に乗り込むと
僅かな距離を祈る思いで走り抜けた


「パーキングに止めてくるから
凛、先に行け」


「サンキュ」


中央広場から駆け出し
迷いなくレガーメの人混みを抜ける


「焦ってるな」


突然の来店に驚きながらも
山下社長は笑顔で迎えてくれた


「今は何処へ?」


「え?彼女のことか?
急ぎの用があるのか?」


「・・・いや」


「悪いな、凛に電話したのは
あの子が内見に出てからだったんだ」


「・・・そっか」


急に萎んでいく気持ちが身体を重くさせる


「電話は?繋がらないのか?」


「あ、あぁ、そうだな」


そんな簡単なことも忘れて飛び出してしまった


そう思って腰のポケットに手を回した途端

目当てのものが無かっただけで
張り詰めていた気持ちが落ちた