リビングに来てから莉子の様子がおかしい


気がつけば俯いているし
目を合わせることもなければ


話しかけてもうわの空


二日酔いだと言ったが
そうも思えなくて


身体を休めるよう促した



「なんか変だったな」


面と向かって会うのは初めての臣も
寝室に消えた莉子を心配していて


俺も側に居てやりたいのに
今日は予約が入っているから店も休めない


「凛を見てる莉子ちゃんの目は
同居人以上のものが見えたけどな」


「・・・だと良いけど」


店に出る準備を済ませてから
臣と一緒に寝室を覗く


「見てこいよ」


「あぁ」


気を利かせて部屋の入り口待つ臣に頷いて


寝ている莉子の顔を覗けば


長い睫毛が涙で濡れていた




「なに泣いてんのよ」




寝ているのにジワリと溢れる涙を指で拭う


好きな女が泣いてる姿は
なにより胸を苦しくさせて


何を思って泣いているのか
俺まで鼻の奥がツンとする





「もう潮時だろ」




臣の声に右の手の平に視線を落とす




とっくに治ったはずの傷が
熱を帯びた気がした






・・・





臣が帰ってからは



店に出るギリギリまで莉子の側にいた




そして・・・



無理矢理起こす




「夜ご飯も支度してるから
ちゃんと食べるのよ?
あ!あと、飲みたいなら店においで
二日酔いには迎え酒的な?」



早口で捲し立てておいて



「泣いたの?」



どさくさに紛れて
涙の理由も聞いてみたけれど


莉子は曖昧に誤魔化しただけだった