翌日土曜日


莉子は休みだから
朝は起こさないことにして


家事をしながらパソコンを立ち上げて
臣が来るのを待った


「おはよ」


「ん」



投資のパートナーの臣との打ち合わせは
我が家ですることが多い

ま、結婚して小さな子供のいる臣の家では
静かな環境下にないという理由だけだが


「愛しの莉子ちゃんは?」


「まだ寝てる」


「一緒に寝てんの?」


「あぁ」


「スゲェ、堪えてんの?」


「・・・まぁな」


「クッ」


いつもの打ち合わせに加えて
今回は色黒の処遇を臣に頼んでいたから


そっちが気になってしまい
先に聞くことにした


「結論から言えば、転勤が決まった」


「何処?」


県内とか、そんな生温い異動は許さない


そんな脳内を読んだかのような臣は


「北海道」とドヤ顔で言い切った


「僻地?」


北海道でも有名な場所とか許せない


「あぁ、地銀にしては珍しい店舗だ
海外店舗がない訳じゃないが
日本語しか話せない奴を異動させられないってさ」


「それは残念」


「だから骨を埋める覚悟の栄転だと」


「そりゃ、良いねぇ」


僻地に飛ばされることになっても
銀行を辞められない理由は色黒の父親も同じ銀行に勤めているからで

気分が良くなったところで
莉子が起きた時に備えてブランチの用意を始めた


「凛、良い嫁になるな」


「チッ」


茶化しがウザいから相手にしたくないが
臣が居ないとあれこれができなくなる


料理を終えた時点で臣との打ち合わせも全て終わっていた


「起こして来いよ、俺、ペコペコ」


急かす臣に舌打ちだけ残して
寝室へと足を向けた