色黒は職を失うことに焦っていた

その僅かな違和感に立てた仮説


携帯電話ショップで手続きを済ませたあと

莉子の自宅マンションに付き添えば


その答えとも言える風景が広がっていた

リビングに繋がる扉も開け放たれたままだから
泥棒に入られたかのような室内は玄関扉を開けただけで嫌でも視界に入ってくる



「・・・っ」


玄関の内側へ入れないほど震えている莉子の肩を抱いて諭すように声をかけた



「一先ず、警察ね
家の中へは入らないで」


コクコクと頷くだけで精一杯の莉子を励まし続けること十分余り


莉子の部屋に駆け付けた警察官は知り合いだった


恐る恐る室内に入って行った警察官は
一度戻ってくると

莉子に確認を始めた


“合鍵”というキーワードが聞こえた時点で
物取りの犯行ではないことが分かったから


鑑識にもストップをかけた



腕の中で震える莉子には悪いが
ゲス野郎と決別するには絶好のタイミングなんだと同居も持ちかけた


思惑なんて今は何も気付かなくて良い



ただ、いつもの莉子に戻ってくれれば良い


そのためなら俺も努力を惜しまない





さて、莉子には見せられなかったクローゼットの中


下着を切り刻んだ奇行野郎には
更なるお仕置きが必要だよな?


持てる全てを総動員して

ゲス野郎をこの街、いや、なんなら日本から弾き飛ばしてやる