「浮気っていっても、間違いかもしれないでしょう?」
慰めようとしてくれているのか
何度も顔を覗き込んでは頭を撫でてくれるマスター
「裸でヤッてたのよ?間違いな訳ないもん」
「・・・あら、凄い場面に出会したわねぇ」
「女が上で・・・」
「まぁ、大胆な女」
「さよならって飛び出してきたの」
「ドラマチックじゃな〜い?」
「茶化してんの?」
「そ、んな訳ないじゃないっ」
「い〜や、面白がってる」
「莉子ちゃん、お姉さんを信じなさ〜い?」
「はいはい、お兄さんありがとう」
「ちょ、アンタ!お姉さんとママ!
ちゃんと覚えなさいよっ」
「ふんっ」
マスターとのいつものやり取りに
少し気持ちが浮上する
「ふんって、アンタ、可愛らしげのない女よね」
「・・・そう、だよね」
それなのに・・・次の瞬間には落ちるから
やっぱり底無し沼にハマったようだ
「ちょ、嘘よ。いつもの掛け合いでしょう?」
焦るマスターがおかしくて
涙は止められそうにないけれど
笑いも同時にやってきた
「・・・っ、変な子。馬鹿ね
あんな色黒男の為に貴重な水分出すんじゃないわよ」
「・・・うん」
「辛かったけど。知らなければ
ずっと騙されたままよ?
彼女が居る男を寝取るような女は
二番手に甘んじるようなタマじゃないから
どの道、仕掛けられてたと思うわよ?」
マスターの言葉がささくれた心にいちいち染みて
泣き笑いから
笑いに変化するまでに時間は掛からなかった