ーーーーー翌日



泣きながら腕の中で眠った莉子を休ませることにした


なるべく想いが伝わるように沢田にメッセージを送る


[了解、病欠にしとく]


伝わったことに安堵して
また華奢な身体を抱きしめて目を閉じた


一時間後



目を覚ました莉子は無断欠勤だと騒いだ


・・・可愛いな


俺が手離せなかっただけなのに
自分の所為で俺が風呂に入れなかったと焦る顔も


兄だと嘘をついて欠勤連絡したことを聞いた顔も


初めて見る莉子ばかりで楽しい


風呂に入っている間に
朝食を頼んだ後は


ニヤける顔を隠すために
速攻リビングを出た


「ハァ」


フリーになった莉子が家に居ると思うだけで
浮き足立つ気分を冷水を浴びることで落ち着かせた


そうして

莉子の作った朝食を向かい合って食べるだけなのに


幸せ過ぎて泣きそうになった


いかんいかん、まだ気持ちを伝えた訳でもないし


なにより、莉子に告白するには
オネェでいる俺の過去を話す必要がある


覚悟を決める俺の耳に飛び込んできたのは、鳴り続ける莉子の携帯の着信音だった


「アタシのこと、居ないと思って良いから」


目の前で電話を取ることを促すと、渋々立ち上がった莉子は


覚悟を決めたように俺に頷いてみせると携帯電話を耳に当てた


(莉子!)


離れていても聞こえる怒号に
莉子の肩が跳ねる

聞き捨てならないそれに
莉子の側に立てば


浮気現場を見られた癖に

莉子の勘違いと責めているのが聞こえた


サッと莉子の手から携帯電話を抜き取る


「アンタ、そんな子供騙し通用するとでも思ってんの?」


おっと、間違えてオネェ口調になってしまった

だが、莉子が一人だと思っていたクズ野郎には効果覿面だった


「この腐れ外道が!」


本心で放ったひと声に更に息を飲んだのが分かったが

こんな男に気遣いなんて無用

莉子が放心しているのをいいことに
散々脅してやった


そして、トドメの一発


「今後、莉子に近づくことは俺が許さない
破ったら銀行でお前の悪行を晒してやるよ」


その勢いに押されたのか


(二度と近づかないと誓う)


クソ男の声は莉子への謝罪より
職を失うかもしれないことに震えていた