あれから数ヶ月


 

スッカリうちの店を気に入ってくれた莉子は


週の半分はカウンターに座っている


俺の気持ちは穏やかどころか
日増しに膨らんでいて


その気持ちを誤魔化すのが難しくなっていた


そんな中


「はじめまして」


「・・・」チッ


真澄の言った通り
莉子はこの街で知らない奴はいないと言い切れるほどの男を連れて来た


「マスター、彼氏なの」


「ふーん」


莉子の彼氏である色黒こと清水は
莉子には話すつもりもないが

昔から繁華街でよく目にする男で

見た目も軽そうだが中身はもっと軽くて
見かける度、違う女を連れていた


だから、俺の取るべき
奴への態度は一つ


「色黒よね〜、末路はシミだらけよ」


「そうですかね?ハハ」


あからさまに喧嘩を売ることにした


勿論、清水もバラされたくない弱味を握られていると知ってか

やんわり躱そうとする


その誤魔化す姿にも全く共感できなくて


「背が高くても性格が残念よね〜」


更に煽るばかりで


「案外優しいって言われますよ?」


「アンタが居るならメインバンク変えるわ」


メインバンクでもないのに
気がつけば、悪態ばかり吐いていた


余程嫌だったのか
うちの店に来なくなった


そのことに莉子は文句を言うでもなく


「タイプって言わなかったの珍しいね」


ケラケラ笑っていたから
そのうち別れると踏んでいたのに


何の進展もないまま


気がつけば一年が過ぎていた