【BAR 凛】



経営する趣味の店は
一見さんお断り


俺の独断と偏見のハードルが高い店



この街に暮らし始めて12年


終の住処も構えて


日々の暮らしは穏やかで楽しい



「いらっしゃ〜い」



本日一番乗りのお客様は
幼馴染の楠田春臣《くすだはるおみ》と
学生の頃に仲良くなった沢田直人《さわだなおと》


「閑古鳥か?」


茶化すように笑うのは臣


「あ〜やだ、静かに飲みたいから
外の灯りつけてないのよ」


「気が付かなかった」


お坊ちゃんでアンテナの低いのが沢田


この三人で居るのは居心地が良くて
ついつい飲み過ぎてしまう


「そう言えば、今度の歓迎会の後
うちの課に配属の新入社員二人を連れて来ても良いかな?」


沢田が勤めるのは複合型商業ビルのレガーメにオフィスのあるWEB関係だったか・・・


「男?」


「えっと、男と女」


「ふーん」


「女の子の方が、入社試験の時からなにかと話題の子で美人
それと真逆で、男の方は大きな熊だな」


「へぇ」


「良いんじゃねぇの?とりあえず入れてみて
次回は考えれば良いだけのことだろ」


勝手に許可を出す臣


「人の店だと思ってっ」


「それに」


「ん?」


「その美人に会ってみたいしな」


ガハハと大口を開けて笑うところは
既にオッサン丸出しだ


「分かった、許可する」


「ありがとう、三次会担当なんだ
助かった」


「なにそれ、既に三次会が決まってるって」


「そう、だよな?」


「変な子達ならボッタくるから」


「おー怖い怖い」


誰に対しても優しい沢田は
この春“課長”に昇進したらしく


とても喜んでいたが


実はこの街の有名な商社の二男で
そのうち商社に戻ることは決まっているらしい