「ストーカーみたいに四六時中張り付いていた女がいて」


「ストーカー」怖すぎる


「張り付いているっていっても距離は保ってたから
特に気にしたことも無かったんだが
俺が、サークルの女の子とかと絡み始めた途端に堪らなくなったんだろうな」


「堪らないって?」


「妄想癖のある女だったようで
俺を自分だけのものにするためには
命を奪うしかないと思ったらしい」


「そんなっ」酷すぎる


「ちゃんと逮捕されたから心配はないが
精神的に参ったんだろうな・・・
それ以降、女が近づくだけでパニックに陥った」


「それはそうだよ、恐怖心は簡単には消えないもの」


「俺、上に姉貴が三人居て」


「・・・三人」


「うん。
一番上の姉貴が考えた作戦ってのが
女達に囲まれないように“オネェ”になることだった」


「・・・確かに、それなら
凛さん目当ての人は対象を変えるかも」


「物心ついた頃から姉貴三人と遊んでいたから
オネェになるのに特別悩むことなんてなくて
すんなり受け入れることが出来た」


「・・・そっか」


「大学は三回生から桐葉に編入
そこから12年この街で暮らしてる」


「・・・ってことは」


「恋愛対象は男じゃない」


「でも、BARでいつも『タイプ』って」


「それは営業トークだろ」


「・・・そっか」


「職業オネェってこと?」


「そう」


「・・・で」


私にキスしたのは・・・


「ずっと莉子が好きだったから」


「・・・っ」


凛さんのストレートな告白に
ジワジワと頬に熱が集まってくる


「今思えば、初めて莉子が店に来た日に一目惚れしたんだと思う」


そんな素振り、気づかなかった

なにより、これまで凛さんとは
面白い掛け合いしかしてこなかったから


だから・・・


「信じられない、よな?」


「う、ん」


「莉子は既に色黒と付き合ってたから
莉子を見ている俺に気づかなかっただけ」


「・・・」


「大学の同級生の沢田と臣には
直ぐにバレてたよ」


「沢田って、もしかして沢田課長のこと?」


「うん」


「凛さんの同級生なの?」


「そう、だから俺がオネェじゃないって知ってる」


もしかして・・・


「会社を休んだ日って」


「沢田に電話した」


兄貴のフリどころか
ズル休みがバレていた