「なに?莉子ったらヤキモチ妬いたの?」


「・・・・・・え」


一変して笑い顔になった凛さんに
高揚していた意識が静まっていく


「臣はねぇ、本当に幼馴染で“投資の”パートナーなのよ?」


そんなこと
「信じないっ」


「なんでよ」


「だって」


あんなに見つめ合って
楠田さんが凛さんを見る目は愛しい人へのものだった


だから・・・


「日曜日だって、駅前でイチャついてた」


「・・・ん?それを見たってことは
あの時点では実家に行ってなかったってことよね?」


「・・・」あ・・・墓穴


「ねぇ」


「・・・」


「それってさ、トータルすると
莉子がアタシのことを好きってことになるけど」


「・・・っ!」



待って・・・そんな、え?


頭の中をフル回転させて
自分の言動を集めてみる


・・・っ!


楠田さんとのことを誤解して
出て行こうとした私

楠田さんとイチャついてたと口を尖らせる私


・・・・・・嘘っ


気持ちを押し込めて出て行くつもりだったのに


「莉子」


簡単に乗せられた私は単純な子供だ




否定しなきゃ


今だけでも


否定して回避するのよっ


例えば楠田さんとの仲が
本当に幼馴染で投資のパートナーだったとしても


凛さんに抱き寄せられたあの日


嬉しくて凛さんの背に手を回した時
大袈裟に跳ねた反応は“女”である私に対しての嫌悪だと思う

だから・・・

失恋した私を放っておけなかった優しい凛さんを


解放してあげられるのも私しかいない


子供の喧嘩みたいに
勢い余った言い訳をする勇気が


やっと持てた