「良いわ、アタシのことが嫌いな莉子を
無理に引き留める程、アタシも鬼じゃないもの」


「だから違うって」


「何が違うの?実家に帰るんでしょう?」


「そうだけど」


「ほら、じゃあそういうことでしょ」


「違うのっ!」


「はいはい、じゃあ、引越し屋手配しておくから」


「凛さん!」


「住民移動届、一週間に二回出すとか
良い経験だったわね」


「聞いて!」


「もう良いじゃない、無理に話さなくても」


「・・・凛、さん」


「出て行くんでしょ?」


「・・・」


「元気で頑張ってね、次はまともな彼氏を見つけるのよ?」


焦る私と違って、凛さんは通常通りで
叶わない思いは苛立ちに変わった


「・・・凛さんの馬鹿っ!」


「ハァ??聞き捨てならないわねぇ」


「凛さんの方が私に出て行って欲しい癖に」


そして、その苛立ちによって
隠すつもりの本心が現れる


「・・・は?」


「私が気を利かせて」


「なにそれ、アタシがいつ気を利かせて欲しいって言ったのよ」


「楠田さん」


「ハァ?臣がなによっ」


「邪魔しちゃいけないと思って」


「・・・は?」


「パートナーが知らない女と暮らしてたら、私だって嫌だもんっ」


「さっきから、何言ってんの」


「凛さんと楠田さんの邪魔したくないから実家に帰るの」


言うつもりも無かったのに
煽られた苛立ちから口走ったのは紛れもない本心で


達成感に満ちていた私を


「ブッ」


凛さんは盛大に笑った