[今日、凛さんの仕事の前に少し話があります]


勇気を振り絞って送ったメッセージは
直ぐに既読になった


[了解]


凛さんの返事を眺めてから
午後の仕事に集中した


そして定時


締切の仕事を終えて同期二人に手を振ると


凛さんの待つ家へと急いだ



「・・・ただいま」


「お帰り、何か飲む?」


「じゃあ、お茶で」


「ん、先に座ってて」


「うん」


既に仕事に行く支度を済ませている凛さんを煩わせないように


向かい合って座ると直ぐに口を開いた


「昨日は泣いて、ごめんなさい」


「・・・いいのよ、アタシも言い過ぎた」


「ううん。凛さんの言うことは最もなことだよ
それは私も理解できるから」


「・・・そう」


「あの、ね?」


「うん」


凛さんと目を合わせているだけで
上手く話せない気がして

あれこれ考えずに勢いに任せることにした


「実家に帰ることにした」


「どうして?」


「日曜日に帰ってみて、そう思ったの」


凛さんと一緒にいればいるほど
私を見て欲しいという欲求が膨らむ
それは、凛さんにとって苦痛以外の何者でも無いはず

だから、離れなきゃいけない


「通勤に一時間半もかかるのに?」


「うん。平気」


「そこまでするのはアタシのことが嫌いってことよね」


「違うよっ、そんな訳ない!」


勢い余って大きな声が出てしまった


「違わないわよ?通勤に一時間半かけても離れたいんだから
此処に居たくないってことでしょう?
ほら、ってことは“嫌い”で正解じゃない」


煽られていると分かるのに
どうしても否定したくて


まんまと乗せられる私は
既に凛さんの術中に嵌っていたようだ