「話が終わるまでは酔えないわよ?」


烏龍茶の訳はそれらしい


「で?今日一日浮かない顔をしてた訳は?」


そんな顔をしていたのだろうか

なんて考えるまでもなく
凛さんとのことが頭の中を占めていて

無意識のうちに吐き出した溜息に
青木が何度も反応していたから


余程浮かない顔をしていたのだろう


「昨日ね、実家に帰る前にNEXTOPに行った」


「・・・え」


勘のいい真澄のことだから
それだけで分かってくれるはず

思った通りに

真澄は一瞬固まったけれど、目線を落として考える素振りをしたあと


顔を上げた時には険しい顔になっていた


・・・ん?


「アイツとよりを戻すの?」


「そんな訳ない。なんでそうなるの?」


「だって、始めたばかりのルームシェアを、たった数日で解消するなんて
あの浮気野郎とよりを戻すか、ルームシェアの相手を好きになるくらいしか理由がつかないでしょう?」


一気に吐き出された真澄の声に息を飲んだ


「・・・」


そして、そんな私を見ながら真澄も固まった


「嘘・・・莉子、ほんと?」


「・・・」


「凛子ママのこと、好きなの?」


「・・・うん」


避けては通れない話をするつもりなのに


認めた思いを口にするには


胸が苦しすぎて


上手く話せそうもない


「莉子?」


「・・・うん」


何度も頭を過ぎるのは
楠田さんと見つめ合う凛さんで


最後に見た駅前での姿を思えば


私の存在なんて邪魔でしかない




「莉子」




溢れ落ちた涙を拭うより先に


真澄に抱きしめられていた