朝イチから老け込んだ一日をどうにかやり過ごして


仕事が定時で終わった瞬間
出てくるのはため息ばかり


この時間に帰れば凛さんはまだ家に居る


だから、なんとか時間を潰さなきゃ、なんて


パソコンも落としたのになかなか立ち上がらない私に


「城崎からメッセージきてるぞ」


青木は向かい側から携帯電話を振って見せた


「・・・うん」


ノロノロと自分の携帯電話を出してみる


[ご飯行くよ]


願ってもないお誘いのメッセージが届いていた


  [了解]


サッと返信をして立ち上がる


「一人で平気かよ」


あいも変わらず過保護にしてくれる青木は
なんだかんだ言っても気配りのできる良い奴だと思う

だから熊みたいな風貌なのに
あんな小さくてフワフワした彼女がいるんだ



「ありがとう青木」


「良いってことよ、また明日な」


「うん」


更衣室前まで送ってくれた青木に手を振って扉の中に入ると


「遅〜〜い」


腰に手を当てた真澄が待ち構えていた


「えっと」


それが叱られる風に思えて戸惑っているうちに


「あたしね、仮説を立てたんだけど
それの答え合わせだと思うと
一秒でも無駄にしたくないのよ」


真澄はニヤニヤしながら「早く」と急かした


追い立てられるようにロッカーからバッグを取ると
ラッシュで溢れる駅前広場へと出た


「今夜はね、個室を予約したから」


「・・・へぇ」


「じっくり行くわよ」


ガシッと繋がれた手に学生の頃を思い出して笑みが溢れる


青木と同じで真澄もなんだかんだ優しい


「フフ」


「何笑ってんのよ」


「ん・・・同期に恵まれたなぁって」


「・・・それも、そうね」


たった三人で寂しいけれど
どの代よりも結束が固いのが自慢だ