「莉子っ、起きなさいっ」


「・・・ん、・・・待って、凛さん」


身体を揺られて重い目蓋を開いた先に


「お母さん“葉子”ですけど〜
“リンさん”って誰ですか〜」


ニヤニヤと笑っているお母さんが見えた


「・・・っ」


お母さんと凛さんを間違えたことに凹む


更に、揶揄われていることにも凹む


「女の子とばっかり遊んでないで
彼氏紹介しなさいよ〜、お父さんだって「挨拶にも来ない男はお断り」って拗ねてるんだからね」


お母さんはニヤニヤしたまま
凛さんを女の子と間違えて


「晩御飯の手伝い宜しく〜」


やたら語尾を伸ばして部屋を出て行った


寝ても覚めても凛さんを想う自分に
喝を入れるようにノソノソと起き上がる


「ハァ」


飲み過ぎたのか頭が重い気もする


頭は冴えて目もパッチリだったはずなのに
本気寝のお昼寝までしたから


今夜は眠れないかもしれない


一週間の間に違う種類の失恋を二回も経験したから綺麗になるのかな


自虐的に笑った直ぐあとでも
やっぱり思い出すのは凛さんのことで


これは最早、自分自身でもコントロールできそうもない

重い身体に喝を入れながら
階段を下りてリビングの扉を開くと


父と兄は呑気に将棋を指していた