大量に飲んだ割に頭だけは冴えているから
“お昼寝”なんて受け入れないようで
目は瞬きも軽快だ


だからといってリビングに居る勇気もないから
二階の部屋に探し物があると早々に逃げてきた


「ハァ」


水曜日に鍵を貰うまで
あと三回は夜がある


平日は私が寝た後で凛さんが帰ってくるから
一緒に寝ている時間は限られる


でも・・・今日は?


日曜日はお店が休みだから
寝るタイミングは同じ


「どうしよう」


楠田さんのことを思えば
一緒に寝てはいけない


罪悪感を軽くするために
取り消せないように予防線を張った


[実家に親戚が集まるので
こちらに泊まって、そのまま出社します]


業務連絡のようなメッセージを入れて閉じるはずが直ぐに既読になった


[大丈夫?迎えに行こうか?]


・・・優しくしないで


   [平気]

「了解。無理しないで]

  [ありがとう]


簡単なやり取りなのに凛さんが気にしてくれているというだけで涙が止まらない


凛さん

洸哉の浮気現場を見たよりも
今の方が胸が苦しい


叶わない想いって


苦しいのに膨らむから厄介で


瞬きをするたび凛さんの笑顔だけが浮かぶの


「好き」


告げることのない想いも


「大好き」


膨らむ想いも


「さよなら」


自分に言い聞かせるように封じ込めた



今日だけ


今日だけ泣いたら


後はいつもの私に戻るから


携帯電話の電源を落としたあと


主が居なくてもピンと張られたシーツに頬をつけ


静かに目を閉じた