「莉〜〜子っ!!」



凛さんの声と同時に走ったオデコの痛みに重い目蓋を開いた


「アンタ!目が腐ってるわよっ」


ケラケラと笑う凛さんを
オデコに手を当てて見つめる


「痛い?」


「うん」


「当たり前でしょ〜が、どんだけ寝るつもりなのっ
腹が立ったからデコピンしてやったわ」


勝ち誇ったような顔で指を弾いて見せる凛さんは

やっぱり綺麗


「高嶺の花よね」


「アンタのこと?」


「この場合、凛さんに決まってるでしょ」


「や〜ね〜、アタシが美人だって言いたいの?」


「電柱に打つかれば良いのに」


「ちょ、アンタ聞き捨てならないわっ!」


憤慨した様子も、やっぱり綺麗で
色んな顔を見ていたかったって悲しくなる


「・・・なによ、どうしたのよ」


毒を吐いてみたり
言葉を失ったみたいに唇を噛んでみたり

私の決意を知らない凛さんには
私のこれは奇行でしかないはず


だけど、それでいいと思う


言うことを聞かない私を
凛さんは同情して助けてくれた


それだけで


失恋も私の糧になる・・・はず


オデコを弾かれて起きたのは
十六時を過ぎたところで


既に店に出る支度を済ませている凛さんは


「夜ご飯も支度してるから
ちゃんと食べるのよ?
あ!あと、飲みたいなら店においで
二日酔いには迎え酒的な?」


髪を縛りながらケラケラと笑って
最後に私の頭を撫でた


「莉子?」


「ん?」


「泣いたの?」


探るように細められた双眸に
俯きそうになるのを堪えて


「・・・ちょっと頭痛だったの」


その所為だと誤魔化して曖昧に笑う


「ほんと?」


「うん」


「薬、出しておこうか?」


「ううん。タップリ寝たから
もう平気みたい」


「そ?じゃあ、なにかあったら
メッセージ入れてね?」


「うん」


「じゃあ、行ってくるわ」


「行ってらっしゃい」


「ん」