「「「いただきます」」」


三人で囲む食卓は


なんだか・・・そう、居た堪れない


『はじめまして、楠田晴臣《くすだはるおみ》です』


握手まで求められて何故か応えた後で席に着いた私に
自己紹介してくれた楠田さんは凛さんの幼馴染だそうだ


・・・敵わない


醸し出す二人の雰囲気に
白旗を頭の上に広げた私は


凛さんの用意してくれたブランチを頂きながら
気がつけば二人を視界に入れないように俯いていた


「そうだ、凛。次の休みって何してる?」


「ん、休みねぇ」


そうか、そうか、デートなんだ
会話にはとっくに参加を諦めたけれど

この至近距離では耳を塞げないから

繰り広げられる二人のやり取りを
嫌でも聞いてしまう


「莉子?」


楠田さんと凛さんが歩いていたら
それはもう眼福、眼福


女の子達の視線を集めること必死


私も目の保養に見るだけの人なら良かったのに・・・


「莉子」


肩を揺られて顔を上げると、心配そうに私を見る凛さんと目が合った


「・・・ん?」


「ん?じゃないわよっ、どうしたの?
二日酔い?何度も呼んだのよ?」


あー、いけない。
ついウッカリ妄想広げてた
とも言えない


「うん。ちょっと微妙」


「や、早く言いなさいよ。モォー
食べたら今日は寝てなさいね」


「・・・うん」


ここは二日酔いにして退散した方が
私も凛さんも都合が良い


残りのサンドウィッチを口の中に押し込むとコーヒーも一気に飲み干した


せめて片付けでもと思った私の手を止めたのは優しく微笑んだ凛さんだった


「今日は特別ね」


そのことがこんなにも苦しいのは
早く二人きりになりたいから私を追い出す気だ、なんて思ってしまう私の醜い心で


「・・・ありがとう」


抗えない苦しさから逃れるように
楠田さんにも頭を下げて
凛さんに、もう一度お礼を言って部屋へと向かう


リビングの扉を閉めた瞬間


堪えていた胸のつかえが取れると一気に溢れてきた