「ほら、帰るわよ?泣き虫」



鍵のかかったスタッフルームの
中に入るとそこは小さな事務所のようだった


三つあるロッカーと
向かい合わせで置かれたデスク
ミニキッチンまである


眺めている暇もなく
その奥の扉の鍵を開けた凛さんに手を引かれて入ると


「・・・え」


ガレージに出た


「繋がってるんだ」


キョロキョロ視線を彷徨わせる私に


「直接じゃないけどね?」


凛さんはそう言って三つ目の鍵を使った


手を引かれたままガレージの中程にある扉から入ると

そこはちょうど玄関ホールの階段下だった


「ここに繋がってるんだ」


「ガレージと家は繋がっててもおかしくないでしょう?」


「確かに」

でも、オシャレな家はそれさえも階段下収納のように隠してしまっている


「靴を持って」


「あ、うん」


靴を玄関に置きに寄ると、凛さんはまたエレベーターに乗り込んだ


「また特別?」


昨日は荷物が多いからだったのに
今日は身軽でも良いのだろうか?


「莉子が酔ってるから」


疑問は凛さんの甘い声に流された


「やった」


「フフ、現金な子」


凛さんの声が優しいことも
繋いでいる手が温かいことも

全部、私の胸を騒がせて仕方ない


前を向くための手段にしては
自分の気持ちを最後に傷つけそうだけど

今はそうでも思っていないと
凛さんと同居なんて出来なくなる


導き出す答えに納得するように顔を上げた