「「ヤッホー」」

「・・・ハァ」


結局最後まで青木と真澄を止められなかった


千鳥足の酔っ払い二人の所為で
ワインを飲んだのに一ミリも酔えなかった


「いらっしゃい」


カウンターの中から妖艶な笑顔で迎えてくれた凛さんは


酔っ払い二人を座らせる手伝いに出てきてくれた


「こんなに飲ませたの?」


「自分で飲んだのよ」


「二人共?」


「うん」


いつものようにカウンターに並んで座ったけれど
酔っ払い二人はニヤニヤしていて油断ならない


「凛子ママ、聞いたわよっ」


真澄のひと声で始まった追及は
青木まで参戦して騒がしくて


静かに飲んでいた他のお客さんは
気がつけば居なくなり貸し切り状態になっていた


「今夜は終いにするわ」と入り口に鍵をかけた凛さんは


「アンタ達、高くつくわよっ!」


売り上げの邪魔をしたと脅してきた


もちろん、そんなことに動じない真澄は


「今日一日、高嶺の花の所為で大変だったんだからぁ」


大きな手振りで可哀想アピールをしている


「高嶺の花がどうしたのよ」


「莉子なんかさ〜別人みたいに
急に笑顔を見せたりするからね?
高嶺の花が咲いたって会社の男どもが押し寄せてきて
大変なことになってんだからぁ」


「へぇ」


・・・っ


真澄の話を聞きながら
私に視線を寄越した凛さんの顔が

笑っているのに背筋が寒々するような
黒さを孕んでいるのは気のせいだろうか?