中が見えない門扉の内側は
少しのアプローチだけで玄関がある


お店と違って真っ白の扉は
普通の家の1.5倍はありそうな高さ


「ほんとお洒落」


「当たり前でしょう?アタシの家よ?」


「はいはい」


「あ゛〜やだ、莉子って」


クスクスと笑う凛さんに促されるまま
持って来た靴を空いている棚に並べる


「少ないわね」


「・・・そう、だよね」


靴屋さんかと見紛うばかりの凛さんの靴達に圧倒されて


私の靴が肩身が狭い


「今度、買いに行きましょう
付き合ってあげるから」


「ほんと?」


見上げた凛さんは私の靴を見ながら


「嘘は言わないわよ」


そう言って笑った


・・・っ


さっきまで忘れていた洸哉のことを
こんな些細な瞬間に思い出す


悔しいのは騙されていた自分


結局、一方的に言い訳を並べて正当化する洸哉の口車に乗せられそうになった私は


“嘘つき”とも“最低”とも言えず仕舞い


消化不良な私の想いは凛さんが洸哉に全て打つけてくれた

そのことだけが救いかもしれない


「もう、馬鹿ね」


フワリと抱きしめられて
シマッタと気付く


前を向くと決めたのに
一瞬で落ちる気持ちは宛らジェットコースターのよう


ただ、それを拾ってくれる凛さんが居る


そのことが嬉しくて
図々しくも背中に手を回した


「・・・っ」


僅かに揺れた凛さんの身体


それが、今度は


さっきとは違う痛みを連れて来る


凛さんにとって私は
“女友達”か“妹”の括り


乗りかかった船とはいえ
彼氏でもない私と居ることは
想像するより大変なのかもしれない


行き着く答えに

回した手を外して


「ごめんね?もう平気」


凛さんと距離を取った