凛さんの自宅ビルは
私が想像していたイメージを軽く吹き飛ばしていた


繁華街のメイン通りを一本外れただけの好立地に

シンプルな外観は“凛さんの”って感じがする


店の真裏の通り沿いにある門扉はまるで要塞の入り口のように鉄壁で
二台の防犯カメラが構える重厚なもの


シャッターで中は見えないけれど
ガレージには車三台とバイク
凛さんからは想像もつかないキャンプ用品が入っているらしい


「アンタ、ほんと失礼ね」


「だって〜」


繋がれた手をブラブラさせながら

青空と凛さん

テントと凛さん

太陽と凛さんの取り合わせが
どうにも想像がつかなくて
更に盛大に叱られた


「今度一緒に行くわよ?
そしたら納得するんだからっ」


ションボリしたって
キャンプに誘われただけで回復する単純な私を


凛さんはいつも通りの優しい瞳で笑ってくれている


・・・心臓、ヤバい


凛さんとのアレコレを考えるだけで
酷く騒がしい胸に手を当ててみる


・・・早死に決定かも


悲劇のヒロイン風の私は
重厚な門扉のセキュリティ解除の説明に空返事をして


オデコを指で弾かれた


「アンタ、此処で日が暮れるわよ!」


「ごめんなさ〜い」


「絶対悪いと思ってないでしょ」


「思ってるって」


こんなやり取りでさえ楽しくて
気持ちの理由は


「このオタンコ茄子っ!」


「茄子って美味しいよね」


「モォーーーーーっ」




やっぱり明白だった