「莉子なら大歓迎」


フワリと笑った凛さんに
胸がトクンと波立った


・・・え、待って


凛さんは男性だけど、女性で・・・


えっと、いつもはBARで男性客に
『タイプ』って愛想笑いを振りまいている


ってことは・・・


この同居は女子二人のシェアハウスみたいなもので


でも私・・・今、胸が・・・


矛盾する頭の中は複雑に絡み合っていて


よほど難しい顔をしていたのか


「アンタ、ブスねぇ」


凛さんは私の眉間を撫でながら
ケラケラと声を上げて笑った


その笑顔を見ているだけで


またひとつ騒ぐ胸を
気の所為だと見ないフリをした


「さて、当面の着替えを詰める?
莉子が用意している間に不動産会社とか
色々電話しておくわね」


「ありがとう、凛さん」


「フフ、上出来」


頭を撫でた凛さんが携帯電話を操作し始めるのを見て


さっきは入れなかった寝室へと足を向けた


ベッドは見ないようにして

クローゼットからキャリーバッグを大小二つ取り出して適当に服を詰め込んでいく


少し感じた違和感は
異常事態の所為にした


鍵を閉めたところで
洸哉は合鍵を持っている


一刻も早く此処を引き払わなければ・・・


そんなことばかりを思っていた私は




この日を境にこの部屋に戻らなくなるとは思ってもみなかった