“シャワーを浴びてくるわ”と気怠げなイケメンは

“キッチンにあるものは好きにどうぞ”と付け加えて消えて行った


「・・・さて」


先に洗面所を使わせてくれたから
着替えもメイクも済ませた


本当は洸哉に作るはずだった朝食メニューを頭から消し去って


冷蔵庫に入っていた高級そうなベーコンに魅せられるまま

洋食路線を突き進むことにした


完成間際に戻ってきた凛さんは
上気する肌の所為なのか色気三割増しで直視できない

そんな私を他所に
テーブルに並んだ料理を覗き込む姿はは通常運転のようだ


「美味しそう」


綺麗な黒髪は私と違って乾いていて
天使の輪まで見える


「「いただきます」」


向かい合って食べるのは二回目なのに
随分と慣れた感じなのは置いといて


キラキラ美味しそうなベーコンに目玉焼きを重ねて頬張った


「美味し〜、ほっぺ落ちる〜」


「大袈裟な子ねっ」


「お高そうなベーコンを発見したから
このメニューしか思い浮かばなかったの」


得意げに話す私を


「アンタ、ベーコンで釣れるわね」


凛さんは簡単に落とした


「・・・ゔぅ」


「フフ」


でも、笑ってるから良いとしよう

昨日の水菜の残りをサラダにしたから
細かく切ってカリカリに仕上げたベーコンとミックスナッツを潰したものとがよく合う


「どんだけベーコン好きなのよ」


凛さんが呆れるのも頷けるのは
スープにもベーコンを入れたこと


「だって〜、めちゃくちゃ美味しそうだったんだもの」


食欲には勝てませんと笑う私を
凛さんは向かい側から笑っている


何気ない楽しい時間も
終わりはやって来るもので


リビングに移動させていたバッグの中で
延々と振動し続けているそれに
ずっと気付かないフリをしていたのに


「アンタ、吹っ切るためにも
キチンと終わらせなさいよ」


話を戻したのは凛さんだった