包み込むような温かい感触に擦り寄る




「・・・おはよ」



その温かさから声が聞こえた


「・・・っ」


目蓋を必死でこじ開けてみたものの
昨日のギャン泣きの所為で視界不良


「ブスね」


態々指摘することもないだろうに
朝から容赦ない凛さんに


「面目ない」としか答えられなかった


「・・・てか、なんで?」


昨日寝かされていたベッドに
凛さんと寝ている状況が理解し難い


「安心して、手は出してないから」


「・・・どうも?」


いやいやそんな問題じゃなくて


並んで寝ているなら兎も角
完全に凛さんの腕に包まれて寝ているんだからね?


「何故、このような形に?」


「アンタが離さないからでしょうが」


「・・・っ!!」


段々覚醒してきた半開きの目に飛び込んできたのは
昨日と同じシャツにネクタイ姿の凛さんだった


「ご、めんな、さいっ」


長湯どころかお風呂にも入らせてあげてないなんて

失礼千万


「許さないけどね?」


「えっ・・・と」


「フフ、嘘よ。悪いと思ってんなら
朝食を作りなさいね」


「・・・ぁぁああああ」


「なによっ!煩い子ねっ!」


「今何時?」


「今は九時を過ぎたところね」


「えーーーーーーっ
どうしよう、遅刻、それも無断で」


未だ解放されない腕の中でもがき始めた私を

ギュッとキツく抱きしめた凛さんは


「会社には電話しておいたわ」


爆弾を投下してきた


「・・・・・・は?」


「だから、無断じゃないわよ?
とりあえず、お熱でお休み貰ったの」


「・・・・・・え?」


「なによ、なんか文句あるわけ?
こんな腫れた目して会社に行くの?
高嶺の花なのに?」


「・・・・・・っ」


確かにそうだ


「感謝しなさいよ?」


「あ、りがとうございます?」


「なんで疑問系なのよっ」


「だって凛さん、誰役で電話したの?」


「あ〜、兄ってことにしたの〜」


「・・・フフ」


似ても似つかない本物の兄貴を頭に思い浮かべて笑いが出た