ーーーーー春



郊外の一軒家レストラン



ガーデンウェディングに相応しい広いお庭は

満開の桜と綺麗な花達に彩られ
沢山の人で溢れている


形式にとらわれないとはいうものの

ポイントは押さえたお陰で



その中で目を惹く主役の二人は
延々と続くシャッター音に耐えていた


(いつ終わるの?)

 (こっちが聞きたい)

(誰か止めないの?)

 (念を送るか)

(フフ)


二人が微笑むだけで鳴り止まないシャッター音


それを止めたのは


「はいは〜い、これくらいで許してあげて」


同業者で唯一招いた“アビ子ママ”だった


何故それで止まるかって?


実はね・・・


「アンタ失礼なこと考えてんじゃないでしょうね?」


「・・・っ」


新郎新婦の前に立ったアビ子ママは
ボディビル出身のゴリマッチョ


オネェを隠さなくなっても
筋トレはやめられないらしい


だから、ゴリマッチョのつけまつ毛ほど怖いものはない


「アビ子ママ、凛さんをイジメないで」


莉子の助け船も


「あ〜ら、ムカつく。アンタほんとムカつく」


一蹴したアビ子ママ

まぁそれも、愛情の裏返しだから

莉子も負けていない


「なに〜?私が凛さんと結婚したから拗ねてんの?」


「キーーーーーーーーっっ!!」


ハンカチを噛んだアビ子ママと
腹を抱えて笑うことになったのは言うまでもなく


和やかな雰囲気の結婚式は
予想を超えて楽しいものになった



バスケットのジャンプみたいな争奪戦になったブーケトスを制したのは


「やったぁ」ご満悦の真澄だった


その真澄も今朝会って早々


「知り合って半年で高嶺の花を攫って行くとか
凛子ママって油断ならないわっ」


頬を膨らませていた一人で



『なんで同期を減らすの』と連日BARのカウンターで悪態を吐いていた


最後は祝福してくれたから
結果オーライ、だな


てか、俺のカメラって誰が持ってるんだ?

莉子の綺麗な姿、ちゃんと撮ってくれただろうか



「凛、さん?
ぼんやりしてるけど、平気?」


「ぼんやりしてたんじゃなくて」


「ん?」


「頭の中、莉子のことばかり考えてる」


「・・・っ」





雲一つない青空と



綺麗な花



そして、なにより愛しい莉子がいて








「凛さん」


「ん?」


「幸せになろうね」


「あぁ」







もう他に欲しいものは、なにもない




「莉子、愛してるよ」


「フフ」








fin complète