莉子の実家へ行った次の週末には
俺の実家へとやって来た


距離があるから車はやめて
電車とバスを使った莉子と二回目のプチ旅行


もちろんその為に綺麗なホテルも予約したし


姉達には夕飯を奮発してくれるようお願いもした


「「「「「いらっしゃい」」」」」


玄関にズラリと並んだ顔ぶれに
莉子は圧倒されながらも丁寧に挨拶してくれた


「莉子ちゃん、さぁさぁ」
「ほら、行こうっ」
「可愛いーーーっ」


そんな莉子を物凄い勢いで攫って行った姉達に


玄関に残された両親と俺は苦笑い


「滅多に帰って来ないのに
彼女を連れてくるって言うから
三姉妹が結託してたぞ」


親父は諦めろと頷いた


「・・・チッ」


仲良くしてくれるのは嬉しいが
莉子はあくまでも俺のだ


莉子が攫われたであろうリビングに向かえば


既にテーブルを囲んで馴染んでいる莉子が見えた


「・・・ハァ」


この帰省が終われば
また当分帰って来ない


だから・・・


「仕方ない」


諦める気持ちになった俺に


「それにしても可愛い子ね」


母さんはそう呟いて
輪の中へと入って行った


「ほんと、凛が生まれなきゃ
俺の居場所がなかったぞ」


未だ嫁に行きそうもない三人に囲まれて
既に肩身も狭いはずなのに

息子と違って、実は娘の方が
優しくしてくれるんだろうなと

その口振りが証明していることに気付いていない


歓談する女五人の輪を眺めながら
食卓テーブルに座った親父に


先週、莉子の両親に挨拶を済ませたことを話した


「良かったな」


「あぁ」


逃げるようにこの街を出て12年余り
こんな日が来るなんて想像もしていなかった


だから、素直に嬉しい


楽しげな莉子の横顔を見ながら
今更ながらにそう思った