市民を守る警察官が忙しそうに行き交う中、花枝はどこに行ったら免許の書き換えをしてくれるのかわからず、誰かに聞こうとした。刹那、花枝の後ろでバサバサと何かが落ちる音が聞こえる。

花枝が振り向くと、そこには警察官の制服を着た高身長の男性が立っていた。黒い髪は少し長めで、規律を重んじる警察官にしては軟派な印象を与えるヘアスタイルである。その警察官の周りには、彼が持っていたであろう書類が散乱していた。

「あの、大丈夫ですか?」

呆然とこちらを見ている男性が心配になり、花枝は声をかける。すると、「花枝ちゃんだよね?」と嬉しそうな声で男性が言った。

「俺だよ、折本麦!」

「えっ、麦!?」

名前を言われた刹那、花枝の頭の中に泣きじゃくる男の子の姿が思い浮かぶ。麦は花枝の幼なじみで、地元にいる時はいつも引っ付かれていた。

はっきり何でも言える花枝とは真逆で、麦は引っ込み思案で泣き虫だった。そのため、よくいじめられてそのたびに花枝が助けてきたのである。