近所をあてもなくぶらぶらしていると、間違いなく知り合いのおばちゃんに会ってしまう。

「あら~史織ちゃん今、どうしてるの~」

この声は。三度の飯より噂話の大好きな、菱沼さんのおばちゃん。

犬の散歩なんて、ヒマですと顔に書いてあるようなものだ。困ったな。菱沼のおばちゃんにつかまったら、話が長い。

「卒業してから働いている会社にいます」

「あら。そうなの今の子はキャリアも大事よね~うちの美保も正社員で子育ても頑張ってるわ~」

「美保ちゃんとこ何歳でしたっけ?可愛いさかりですよね」

「そうよぉ。2歳なの!何かっていうと、すーぐばあばのとこ行こうって連れてくるのよ~」

孫可愛いの弾丸トークに、ひきつりつつも頷いていると、

「で、史織ちゃんはどうなの」

と矛先が向いてきた。

「えーっと特に何もなく、普通です」

ばちんと背中をはたかれ、

「ダメよ、女の盛りなんだから、浮いた話の2つや3つもなくちゃ。そうだ、斉藤さんちの息子さんまだ結婚してないでしょ。史織ちゃんどうかしら」