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中学生の頃は痴漢なんていつもの事で。

いちいち反応してたら相手の思うつぼだし、やられてもイヤホンで誤魔化して気にしないようにしてた。

もちろん、話しかけられても聞こえないふりを____


「なー、伊澄ー」

「.......。」

「なーってば、無視すんな」

「.......っ、何だよ.......」


階段事件から1日。

この茶髪の不良、柚槻陽に「かわいい」と言われた後、全速力で逃げた私は


何故か朝からしつこく言い寄られている。


周りの女子は私と柚槻が一緒にいるのを見てイケメンの供給だの目の保養だので騒いでいるけど、それでもみんな私のことを「かっこいい」としか言わなかった。

男の子のフリをした私のことを「かわいい」と言ったのは、やっぱり柚槻が初めてだ。


だからだろうか。何となく、ほんとにちょっとだけ、柚槻陽に興味が湧いたのは。


「やっと反応した、おはよー琳“ちゃん”。」

「!?きっ.......気持ち悪いからちゃん付けで呼ぶなよ.......」

「なんで?別にいいじゃん」

「良くない.......ていうか離れろ、殴るぞ」


さっきから肩がくっつくぐらいの距離で、離れようとしても磁石みたいに引っ付いてくる。

昨日の今日でこの懐き具合はかなりやばい。


「琳ちゃんさー、今日から昼飯一緒に食お」

「は!?や、やだよ.......」

「なんで?どうせいっつも一人で食ってんだろ」

「そうだけど.......お前も友達とかいるじゃん」

「いねぇよ、俺ぼっちだし。」


.......なんか、悪いこと聞いた。


何となく気まずくなって曖昧に返事をすると、「琳ちゃんもぼっちなんでしょ」と笑う柚槻。

ほんの少し上がった口角を必死に隠しながら、うるせぇ、とだけ返して教室に入った。